「前提を仮置きする」という考え方。決まらないときは、変数を減らせばいい
「自由に考えていいよ」と言われた瞬間に、手が止まる。そんな経験、ないですか?
制約がないほうがラクなはずなのに、なぜか一番決まらない。今回はその理由と、ぼくがよく使っている「前提を仮置きする」というやり方について書いてみます。
自由度が高いほど、決まらない
たとえばクライアントから「サイトをリニューアルしたい。中身はおまかせで」と言われたとする。
一見ありがたい話。でも構成案を作ろうとすると、途端に止まる。
- ターゲットは誰なのか
- 予算はいくらなのか
- 公開はいつなのか
- 既存システムは残すのか
これが全部「未定」のまま考えると、どうなるか。ターゲットが変われば訴求が変わる。予算が変われば作れる機能の数が変わる。公開時期が変われば作り方そのものが変わる。組み合わせが爆発して、どの案も「これでいい」と言い切れなくなる。
決まらないのは、考える力が足りないからじゃない。単純に変数が多すぎるんだよね。
だから、仮置きする
そこで、まだ答えが出ていないものを、勝手に「いったんこれ」と置いてしまう。
- ターゲット:30代の既存顧客
- 予算:500万円
- 公開:10月
根拠は弱くていい。ヒアリングで一番それっぽかったもの、過去案件の相場、なんとなくの肌感。それで十分です。大事なのは、動く変数を減らすこと。
固定した瞬間、話が急に進み出す。「500万ならこの機能は次フェーズだね」「10月公開なら、逆算して要件確定は7月末」。判断できるようになるんです。
もうひとつの例:複数案件の予定調整
これ、スケジュールを組むときにも同じことが起きる。
案件を3つ4つ抱えていると、「A案件の要件定義」「B案件の撮影」「C案件のリリース」あたりが同じ週にぶつかってくる。ここで全部の日程を「動かせるもの」として最適解を探し始めると、まず解けない。自分だけじゃなく、メンバーやクライアントの都合まで変数に入ってくるので、組み合わせが無限になるんだよね。
そこで、いちばん動かしにくそうなものを一本、動かないものとして仮置きする。「B案件の撮影は来週火曜。これは動かせない」と決め打ちしてしまう。
すると問題の形が変わる。「全体をどう組むか」ではなく「火曜の前後にどう置くか」になる。とたんに手が動き出して、残りは意外とすんなり埋まっていきます。
もちろん、それでも埋まらないことはある。そのときは「本当に火曜じゃないとダメなのか」を確認しにいけばいい。どこを交渉すればいいかがはっきりするのも、固定してみたおかげです。
前提は、変わったら変えればいい
仮置きに抵抗がある人は、たぶん「間違ってたらどうしよう」と思ってる。でも仮置きは決定じゃない。
進めていく途中で「やっぱりターゲットは新規顧客だな」と気づいたら、そこで置き直して考え直せばいい。しかも一度最後まで考えたあとなら、考え直すのは驚くほど速い。骨格ができているから、差分だけ直せばいいので。
というより、仮置きして進めるからこそ「その前提が違う」と気づける。何も置かずに悩んでいると、何が間違っているのかすら見えてこないんだよね。
議論の材料になれば、それでいい
もうひとつ。仮置きは、自分が考えるためだけのものじゃない。そのままクライアントとの議論の材料になる。
「予算500万、10月公開という前提で組んでみました」と持っていくと、たいてい具体的な反応が返ってくる。「いや、予算は300万なんです」「公開は年末でも大丈夫」——白紙のまま「ご要望をお聞かせください」と聞くより、はるかに速く、正確に本音が出てくるんだよね。
人はゼロから語るのは苦手だけど、目の前にあるものに対して「ここは違う」と言うのは得意。だから、たたき台があるだけで会話の質が変わる。
そう考えると、仮置きが外れていても損はしていない。外れたとわかった時点で、それは情報がひとつ増えたということだから。合っていれば進むし、違えば教えてもらえる。あとは一緒に詰めて、良いものにしていけばいい。
ひとつだけ注意点。仮置きした前提は、必ず「これは仮です」と明示しておくこと。資料の隅でもいいから書いておく。これをやらないと、いつのまにか合意事項として一人歩きします。
まとめ
考えが煮詰まったら、まず自分に聞いてみてください。
「いま、変数はいくつある?」
そのうちひとつでも仮で固定できれば、たいてい前に進みます。